先物オプションとはの最大限化に向けて

GNPに占める設備投資の比率も急速に高まり、「岩戸」末期の六一年度はついに二〇%を超えた。
二〇%を超えるという事態は成長力の強い日本経済でもめったになく、後に来る「いざなぎ景気」で見られただけである。 同時に、こうした経験則から後に「二〇%は景気の分かれ目」と唱える景気循環理論も登場するようになった。
設備投資がGNPの二〇%を超えるような水準は過剰設備をもたらし、ひいては景気後退を招くという考えであり、最初の実例になったのが「岩戸景気」だったのである。 設備投資の具体例としては、鉄鋼が典型だ。
鉄鋼業界は、戦後復興の時期から傾斜生産によって徐々に発展してきたが、生産力アップのための設備投資も活発だった。 五〇年から始まった第一次合理化では、延べ一〇〇〇億円を超す投資を行い、圧延部門にストリップミルを導入し、生産効率を一気に向上させた。
また、海岸に工場を建て、海外からの鉄鉱石輸入に対応する態勢を整えた。 さらに「神武景気」と歩調を合わせた第二次合理化では、一貫生産による臨海製鉄所の建設が中心になった。
これらの設備投資は五九年、六〇年に一〇〇〇億円を超えるピクを記録、六二年までに延べ五〇〇〇億円を投じるという、第一次合理化とは比較にならない規模に達したのである。 戸景気」の六一年度には二一万四〇〇〇円まで伸び、六年間で二・二倍になった。

春闘が定着したのもこの時期で、サラリーマンの給与は毎年一〇%前後で増え続けた。 大衆消費の下地がそろったわけである。
当時の新車販売台数を見ると、五八年度の五万三〇〇〇台から五九年度七万七〇〇〇台、六〇年度一七万台、六一年度二三万台と猛烈なペスで増えた。 「三種の神器」にモタリゼションが加わった形だ。
一万円台のステレオが現れて人気を呼び、当時の小学生にかかる家庭の年間教育費は平均一万円だった。 しかし、何といっても有名なのは五九年四月の皇太子(現天皇陛下)のご結婚。
「民間初のお妃」として美智子妃殿下に憧れるミッチ・ブームが起こり、結婚式を見ようとい投資のピクは、まさに「岩戸景気」の真っ最中だった。 この時期はエネルギー政策も転換期に当たり、それまでの石炭中心から電力、石油への交代が顕著になった。
重油を使う火力発電が水力発電にとって代わり、六一年ごろには水副力と火力の発電量が逆転。 石油化学工業は原榊料をナフサに求めた。
征また、鉄鋼の飛躍的な発展は、自動車、電機などの加工組み立て産業の発展を支え、耐測久消費財の大量生産、大量普及を可能にしたのである。 生こうした産業の発達は国民生活も豊かにし、一人当たりGNPで見ると「神武景気」当時の五五年度は九万七〇〇〇円だったが、「岩う国民的願望がテレビを急速に普及させたのである。
都市部でテレビを買った世帯が、五八年の五%から、六〇年には二〇%にもなったのが象徴的である。 池田内閣の「国民所得倍増計画」はこうした状況の中で公表され、大きな反響を呼んだものだ。
一〇年間で所得を二倍にしようという、それまでの慎重だった政府見通しからすれば「狂気に近い」強気の見通しだったからである。 計画の説明書には「育ちざかりの日本経済」「スピドアップで豊かな生活」など、気のきいたキャッチフレズが並んだ。

結果はどうか。 六一年度と七〇年度を比べると、名目GNPは二〇兆一〇〇〇億円から七五兆一〇〇〇億円になった。
すなわち三・七倍である。 この期間の実質成長率も平均すると一〇%を超え、計画は完全に達成されたのである。
また、池田内閣は誕生直後の六〇年八月に低金利政策を打ち出しへこれに証券市場が好感を示した。 東証の平均株価(ダウ平均)は五五年の三七〇円からほぼ一貫して上昇し続け、ピクの六一年には一八〇〇円台に達した。
大衆資金を対象にした株式投資信託、公社債投資信託も爆発的に伸び、証券会社の店頭に主婦や学生なども押しかけた。 どこかバブル期のNTT株フィバに似ていた。
公社債投信の発売にあたっては、有名な「銀行よさようなら、証券よこんにちは」のキャッチフレーズが登場したのである。 こうした大型好況は、それまで過剰だった労働力を一転、人手不足に変えた。
企業は新規の労働力を求め、中学卒業者は「金の卵」ともてはやされた。 中卒者を乗せた集団就職の上京列車が上野駅に着く光景が毎年展開された。
一方、六〇年は貿易自由化元年になった。 それまでの日本は外貨不足と国内産業保護のため、輸入は制限され、自由化率は四〇%程度にすぎなかったが、海外の批判が強まったため、六〇年六月に「貿易為替自由化計画大」を決定。
さらに、六一年九月には「貿易為替自由化促進計画」を決定、輸入の九〇%を自由化する大胆な開放政策を打ち出した。 実際には自由化がどんどん進み、六三年には九〇%を超えた。

これに備えて企業の設備投資が一層盛んになったという側面もあった。 しかし、石油をはじめとする原料の輸入自由化のメリットは大きく、日本経済の特徴となる加工貿易の構造はこのころに完成したといってよい。
この時期は関門トンネルの開通、東京タワの完成など、明るいニュスが相次いだ反面、水俣病の発覚による公害問題の深刻化、日米安全保障条約の改定をめぐる国論の分裂とデモ隊の女子学生死亡(いわゆる六〇年安保)、九州の三池炭鉱で起きた大規模な労使紛争、浅沼社会党委員長の暗殺など、暗いニュースも少なくなかった。 長期政権となる佐藤内閣が発足したのは象徴的だった。
日本経済にとって、「神武景気」が始まった五五年から、第一次石油ショックが襲った七三年までの一九年間が高度成長期であり、「四十年不況」はこの中間に発生している。 景気基準日付では第五循環の上昇期が「オリンピック景気」、下降期が「四十年不況」にあたり、「四十年不況」の後には戦後最長の「いざなぎ景気」が登場した。
いわゆる「四十年不況」は昭和四十年(一九六五年)をピクにした日本経済の本格的な不況であり、高度成長のさなかに起こった「戦後初の大型不況」だった。 景気基準日付によると、日本経済は「岩戸景気」の後に一年足らずの景気後退期を迎えた。
続く一九六二年(昭和三十七年)十月から六四年(同三十九年)十月の二年間、東京オリンピックの準備を控えた「オリンピック景気」でにぎわった。 「四十年不況」はこの後の六五年十月までの一年間を指す。
不況入りした六四年十月、東京オリンピックの直後に、高度成長の立役者ナスを記録。 個人消費の伸びも六・五%で、一〇%前後が普通だった当時では大きなダウンとなった。
生産面の指標ではさらにはっきりした傾向が見られる。 六五年度の鉱工業生産指数、出荷指数とも前年比は三・二%、三・八%にすぎず、前後の好況時の「オリンピック景気」「いざなぎ景気」の一〇%台半ばに比べると、極端に落ち込んだ。

企業の経常利益も前年比マイナス三・九%で「いざなぎ」の二〇〜五〇%という景気のよさから見れば不景気ぶりは歴然としている。 なぜ、これほどの不況になったかといえば、要するに東京オリンピック開催に向けた過大な投資に対する反動、が最大原因である。
「四十年不況」のさなかには「構造不況」論が盛んだったが、「いざなぎ」への突入とともに影をひそめた。


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